「はい、わかりました。生産数量の確認ができましたら早急にお伝えいたします。」
本社2階。鳴り続ける電話と浅野の声が響きわたる。
「そうです。本日の出荷分は100ケースですね。」
「いえ、それ以上の出荷は無理です。」
お客さまは一日でも早く一本でも多く出荷を待ち望んでいる。
そんな状況は浅野にとっては百も承知である。生産ウェイティングの現状をいかにコントロールしていくか優先順位や発注順位を調整していくかであり、月間500丁もの出荷をこなしていくのである。
基本的な浅野の仕事は、取引先毎への受注・納品管理であり、出荷準備を整えたりサポートしたりというバイスワークである。

全く予測不可能な事態が浅野に飛び込んでくる。
「え〜!?またブレード欠損ですか!」一方ではクレーム処理への対応も切実である。
「当社の商品は切れ味が良く、化粧箱や木箱に入れても荷崩れがあると突き抜けてしまって刃が欠けることもよくあるんです。(笑)」冗談のような本当の話である。

「納入先の殆どがヨーロッパ・アメリカへとお届けしておりまして皆さんには大変とお待たせしているということを痛切に感じております。」
そのことによるジレンマがあることも付加えた。
「私たちの商品は全てが技術者の手に頼るため生産能力の限界があることも事実な訳です。ですから無理な生産をすると品質が落ちたりしますから返ってご迷惑をおかけすることに成りかねないのです。」
「どうしてもお待ち頂かないといけないんです。」

待ってまででも欲しいと言わせる商品がある。何とも羨ましい限りのことである。
商品力は人間力からも影響があるという。
「私たちの職場は働きやすく技術も事務も一体感があって人間味が溢れていますよね。
だから良い商品が創り出されていると自負しています。」

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