本社一番奥の南側で陽当りの良い明るい作業場には研削機が10台ほど並んでいる。
その前では一人一人が一心にそして寡黙に仕事に取り組んでいる。
さらにその奥に丹羽のスペースがある。
丹羽が担当しているのは包丁のハンドル(取っ手)部分いわゆる“グリップ”を荒削りの状態から仕上げへと完成させていくことである。
「人の手が握る訳ですから手のひらにしっくりくるかどうかがとても大切なんです。
ですから、この丸みと曲線がグリップの生命線なのです。」
そう言われて手渡された製品のグリップはとても滑らかで持つほどにしっくりと来る。そして、手のひらの筋肉や指の動きを知り尽くしているかのような手持ち感がある。
「ね?! いいでしょ?」丹羽の満面の笑みがそう促す。
「難しいのは、一本一本が手作業ですから品質を同一に保つことなのです。」手にしたグリップを眺めながら振返るようにつぶやいたかと思うと、「でもそれが私たちのチャレンジなんですよね!」と明るく笑った。
彼らが向き合ってる機械横には何本もの研磨材が並んでいる。円盤形のそれは荒削り用、曲線造り用、仕上げ用・・・など作業によって使い分けていくのである。
彼らの脳にはシナプスがいつも働き、絶えず完成形が映像として描かれているのであり、
3次元で局面を捉え指先へと指令をしていくようである。
「自分たちはプロとしての誇りがあります。私たちが手がけている商品は世界最高峰のショップ・売場に並んでるわけですから、手にして頂く世界中のユーザーのためにもこれからもずっと良いものを提供していきますよ。」
明るく言ってのけるその表情からはプロフェッショナルの一面を感じさせると同時に指先を見ると何千何万とグリップを仕上げあらゆる苦悩を乗り越えてきた証が刻まれている。