本社工場内の一角にガラスのパーテーションで仕切られたスペースがある。
振動や騒音さえない全く静かな新鋭の機械があり、傍らでハガネをチェックしゆったりと動く姿があった。澤田である。
その機械からは包丁の“原形となる型”が数十秒に1個ずつ自動的に出てくる。
一見すると何かの部品にさえ見えてしまう“原型”は一つずつ丹念に澤田のチェックによって搬出されていく。
原材料の鋼材から型が設計通りに抜けているかどうか・・・何気ない作業でもその後の約20工程ある作業に大きく関ってくることになる重要な工程なのである。
包丁本体のハガネをブレードと言い、それを磨き上げていくことを研削と言う。
澤田にはその原型が磨かれるとどんな切れ味(=性能)になるのかということと、同時に仕上がりの芸術的とも言える美しさまで全てが見えているのである。
「研削技術は100分の1単位で仕上げられていくのです。わずか数ミリしかないブレードを両面から加工していきますので均整を保つことが重要なのですね。」
「最終は顔が映り鏡と同様にまでなりますし、寸分の狂いが出ると顔が歪むんです(笑)」
今ではすっかり刃物業界のプロとしての顔つきになっている澤田にも苦労はあった。
5年前を振返ると、自動車整備士からという異業種からの転職は、随分思い切った決断であったことに間違いは無かった。が、それ以上にモノ造りへの愛着や意欲が勝りキャリアデザインを成功させたのである。
「右も左も分かりませんから積極的に周りの先輩に聞いていくしかないんです。当然、聞いたように行動しなければなりませんから素直さも必要なんですよね。(笑)」
「今でもその姿勢は心がけておりますね。いつも上手くいくわけじゃないですから悩みますよね。悩んだら自分で抱えずに周りに聞き相談していくようにします。時にはきつく言われることもありますが自分を高めていく為にも素直に受け止めていますよ(笑)」
この澤田のコメントは若い人へのアドバイスであり同時に就職を考える人へのメッセージでもある。